1・スマホ小説始めました

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 「もう少し書こうよ」  たった数行の文章を眺めながら、慶太郎はスマートフォンを挿絵の手に戻した。  「もう少しって......」  「魔王が魔法使うとこだけど、抽象的過ぎやしないか? その魔法を受けることで勇者の体がどうなったかを書けば文字数は増えると思うよ」  「抽象的と言うなら、あなたの右左右左って書き方も随分抽象的だと思うけど」  挿絵は慶太郎が書いた最初のページにジャンプすると、そう反論する。  「そう言えばそうだな、投稿小説は何時でも書き変えが出来るからね。そこは手直ししとくよ。挿絵も手直ししといてよ、非公開状態のうちなら読者に迷惑もかからないし」  慶太郎はページの中の右左右左......の描写を ◆  勇者は、こちらに飛んでくる槍を、一本ずつよく見ながらそれを素早くよけた。 ◆  と改稿し、再び挿絵にスマートフォンを手渡した。  「これなら、まあまあ読みやすいけど、私の場合はどうすれば良いの?」  「そうだな。鎧がひっぺがされたようにして"勇者が全裸"にされたとかはどうかな」  「勇者が全裸って、これ子供たちも書くのよ。それにことばによっては強制非公開もあるってあなた言ってたじゃない!」  唐突な慶太郎のアイデアに、挿絵は思わず声をあげた。  「それは、何を書いても同じ問題だよ。ダメなら書き直せばそれで済むことだよ、それでも心配ならこうしてみよう」  慶太郎はスマートフォンを手に取ると...... ◆ パンツ、パンティ、ビキニ、マンキニ、フンドシ、Tバック、Iバック、ブラジャー、ニップレス、乳パット...... ◆  と文字の羅列を入力する。通常なら運営から文章改稿の督促メールが来るのだが、これだけ入力してもメールは一つも届かなかった。  「この10個のワードは、強制非公開パスのようだな、気になればこうやって確認すれば何も怖がる必要はないんじゃないか?」
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