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「今までの作家がしてこなかっただけだよ。それに複数の人間で一本の小説を書いてはいけないと言う決まりはないんだ」
書籍の小説でも、電子の小説でも、家族四人が一つの作品を作ったと言う前例は、30年で終わった平成を過ぎた今でも存在しない。
「本当にそうかしら?」
「一人で小説を書くと言う常識を、誰も疑わなかったからそうなるのは無理はないよ」
「だからって、あなたのぶっ飛んだ発想についていく必要が、私たちにはあるのかしら?」
そのぶっ飛んだ男を選んで結婚したのは、どこのどいつだよ。慶太郎は胸中で呟きながら、家族共著について語る。
「じゃあ、メリットをあげてみよう。小説のアイデアは一人で考えるのには実は限界がある。それが四人ならどうだ、たくさんのアイデアが出てくることになる」
「つまり、あなたがアイデア切れしたと」
「それと、小説には多くの資料を漁る必要もあるんだけど、一人ではその全てを補完することは出来ないし、調べものをしているとそれだけに時間を費やしてしまう癖も出るから、それに歯止めをかけるひともいる」
「あなたが、正にそのタイプよね。納得。でも私はそれが出来るとしても、優也と優成はまだ小学生よ?」
「それなら話は早い。家族共著を期に養っていけば一石二鳥だと思うよ」
「一石二鳥ね、それで四人で小説を書きあげたあなたは満足でしょうけど、私たちには何かないのかしら?」
「そうだよ、何かご褒美がないとモチベあがんないよパパ」
「ギブ&テイクじゃないと、あたしもやる気出ない」
モチベにギブ&テイク、か。
学校で、マセた同級生に毒されて覚えた横文字の略語のようだが投稿小説を始めればそれが直ると割りきると、慶太郎はこう提案した。
「投稿小説は応募のイベントで表彰されると、一番多くて10万円は手に入るんだ。授賞して手に入れば何でも好きなものを好きなだけパパが買ってやる。これはパパ一人じゃない、家族みんなのものだからな!」
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