1・スマホ小説始めました

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 "本田(ほんだ)優絵(ゆえ)"  本田家の姓と、優也と優成の「優」に、挿絵の「絵」を掛け合わせた新規クリエーターが新しいスマートフォンにユーザー登録された。 このクリエーターが投稿小説サイトに産声をあげるまでには、IDパスワードの設定や、クリエーター情報の入力に自己紹介文の入力など、子供たちには「どうして、そんなまどろっこしいことをしなければならないのか?」と言うことの連続を一つ一つをクリアしながら、漸く産声をあげた新しいクリエーターである。  この世界では、ひとはこうして生まれて来る。  「初めて登録した時のことを思い出したよ。優也たちと同じことを考えたもんだ"この機能は本当にいるのか"ってね」  長いこと書いていると、クリエーターの多くが忘れがちになってしまう初めて味わった苦労を慶太郎は思い出した。  「だから、ぼくはサブアカウントは作らない主義なんだけどね」  「サブ、なに?」  「サブアカウント。メインアカウントの保険みたいなものだよ。二兎追うものは一兎も得ずだ。まずは決めた一つのものを責任を持って最後までやり遂げよう。先ずはどんな話にしたい?」  これで漸く本格的にクリエーター活動出来ると思った慶太郎だが、そうは問屋が卸さなかった。  「パパ、プロフィール画像が未設定になってるけどこれは描かなくて良いの?」  優成が丸が三つの投稿小説サイトのロゴを指差した。優成は家族の中でお絵描きが好きなので、プロフィール用のイラストを描きたいようだ。  「それはどんな話しか分かっていないと、書くのは難しいな。そうだな、それも家族共作で書いてみるのも面白いかも」  「あなた、それってアリ?」  まさかイラストまで家族でやると言い出すとは想定外だった挿絵は開いた口が塞がらない。  「ぼくは大いにアリだと思うよ。イラストって書くのは一人だけしかダメだなんて、誰が決めたんだ? 正しさだけに捕らわれず、みんなで楽しもうよ」  「それは、そうだけど」  「まあ、作品を完結させてからのお楽しみにして、それぞれがどんな話しにしたいか意見を募ろう」
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