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「聞き覚えのない名だと思ってな」
遙か頭上から、一瞬だけ僕を見下ろすと、真の視線は再び石碑へと戻される。
――確か聞いた事ないけど……お参りしてから、気にするなんて遅いんじゃ?
魔王ボイスに同意しつつもそんな事を思う。
まぁ、草木に埋もれかかった入口の向こうに、リフォームされた神社があると気付いたのは最近の事だし、何かの縁だからと散歩ついでの気軽なお参りなので知らないのも無理はない。
それにどんな名前の神様でも、願いさえ叶えてくれれば文句はないし。
視線を正面に向けたまま、神社の由来を読み解こうとするものの、それはにわか信者には難解すぎた。
――真には読めてるのかな?
口数少ない彼の思考を読みとろうと、斜め下から彼の表情を盗み見る。
◆
空間葵と赤井真との関係は複雑……というよりも微妙なものだ。
とある事情により、高校時代の僕は、男子のフリをして男子寮に住まわせてもらっていた。それも個室ではなく相部屋で。
その時の同居人が『破壊神』の異名で恐れられていた彼――赤井真だった。
当時はボクも真の事を恐れていたひとりだったけど、他に行き場がなかった以上、逃げ出すという選択肢は選べなかった。
でもそのおかげで、僕は誤解されがちな真の本当の姿を目の当たりにすることができた。
・ガサツで大ざっぱそうなのは外見だけで、細やかな気配りができる事。
(考えすぎで、動けなくなってしまう時もあるけど)
・力がとても強いけど、不器用なせいでうっかり物を壊しちゃたりする事。
(その後の反省してる姿が僕的萌えポイント)
・右側の聴力が極端に弱いせいで、よく人の声を聞き漏らしてしまう事。そのせいで態度が悪いと誤解され、時に荒事にまで発展してしまう事。
(僕が一緒にいるようになってから、そういう事はなくなったけど)
・意外にも猫派である事。
(ちなみに僕は犬派)
・僕が本当は女子と知っても、それまでと変わらぬ対応をしてくれた事。
(ここにはありがたくも、女子的には微妙に不満だったりもする)
そして、誠実で人間的にとても尊敬できる人物である事……。
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