生命のゼンマイ

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 そうして、バーのカウンターに座ってアバンチュールごっこをしていた時のことです。カウンター席は五人掛けで、端に女の子がいて、次に死神さま、その隣に陣取ったのが後からやってきたサラリーマングループの三人連れでした。この手の小さなバーで面識のない人どおしで席を詰めねばならない時は、お隣さんとトラブルが起きないよう、お互い注意を払います。ところが、このお三方、他のお店でしっかり飲んできたのでしょう、すでに出来あがってからの登場でした。それで騒々しいと言ったらこの上なしです。  死神さまの方はと申しますと、隣の女の子といい感じになりかけていたところでしたのでムードもぶち壊しです。しかも運が悪いことに、三人の中で一番うるさいのが死神さまの隣に座ってしまいました。不運と言うのならそれだけでも十分ですが、こいつが絡み酒と来ましたから、いわゆる一つの踏んだり蹴ったり状態です。 「おい、兄ちゃん、アンタも思うだろ、間違ってんのは部長なんだよ!」 「あ、そっちヨソの方ですから」 「他のお客様へのお声かけはご迷惑になりますので」  部下とおぼしき連れとカウンターのバーテンさんが慌てて制止に入ります。しかし、できあがってしまっている人間は、他からの制止を受けると俄然反駁を始めるものです。もとより唯我独尊の境地に没入している絡み酒ですから、手には負えません。
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