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ただ、調べてみますと動きの鈍い人形は、寿命が尽きかかっているのではなく、機械的な不具合でそうなっている気配です。だとすれば生命のゼンマイを巻いてエネルギーを与えねばなりません。ついでに、かの酔漢のゼンマイは少し緩めてやろうかと、そんなことを考えて、死神さまは掌をくるりと廻しました。すると、ゼンマイを巻いたり緩めたりするための巻き鍵が掌に現れる仕儀となっていたのですが・・・・・・
「あれ、出ない?」
死神さまの本来のお姿など、わたしたち下々の民には知るよしもございませんが、もし先のように人間の姿を模していたとすれば、いわゆる「血の気が引く」とか「青ざめる」とかいったところでしょう。生命のゼンマイを巻くための鍵が出てこないのですから。必要になった時に掌をくるりと廻すだけで現れるはずの巻き鍵です。失くすはずのない鍵なのです。
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