あなたが誰を好きだとしても

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 大雅と会う機会が減っていたことは、不幸中の幸いだった。気の利いた言葉も掛けてあげられないし、何より、私が辛いだろうと想像できた。昨日までは、大雅の一番の理解者は自分だっていう自負があったのに、大雅のことなんて何もわかってなくて、ただの自惚れだって突きつけられたことも大きい。  夕べはずっと涙が止まらなくて、朝起きてからも少し顔がむくんでいた。本当は学校を休んでしまいたかったけれど、こんなことで休むのも情けなくて、重い腰を上げる。できるだけ家族に顔を見られないようにして、朝ご飯もそこそこに家を飛び出した。  エレベーターを待つ間、昨日、大雅とここで話していた時のことを思い出した。一瞬、あの時断っていれば良かったなと思ったけれど、結局結末は変わらないのだから意味のないことだと、諦めのため息をついた。  エレベーターに乗った。行き先ボタンを押してドアを閉めると、半分くらい閉まったところで再びドアが開いた。 「よう」  大雅だった。朝、電車が混む時間帯を避ける為に私は早めに家を出ているから、大雅とは一緒になることはないはずだった。 「こんな早い時間に出てんのかよ」  大雅が閉ボタンを押す。 「うん。電車混むから」  グングンと身体が地面に引っ張られ、あっという間にエントランスに到着する。エレベーターを降りるといつものように大雅が先に出て、私が後を追う。二人の足音が交互に堅い床を鳴らし、音が鳴り止むと同時に入り口の自動ドアが開いた。
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