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あなたが誰を好きだとしても
後ろ姿で、すぐに大雅だってわかる。
少しガニ股で、肩で風を切るようにずんずんと歩くのは昔から変わっていない。
「待ってよお」
小さい頃から、そう何度背中に向かって叫んだことか。
今では私が大雅の後ろを追いかけることもなくなって、逆に大雅の方が私に歩幅を合わせて歩いてくれるようになっている。
――ただし、一緒にいる時間はあの頃より随分と減ってしまったけれど。
「今日のテスト、どうだった?」
挨拶もなく、突然投げつけられた言葉に、大雅がぴたりと足を止める。
「いつも通り、余裕」
私が横に並ぶのを待って、再び歩き始める。
「できなかったってやつね」
「そういうこと」
並んで歩くのは三ヶ月ぶりくらいな気がする。同じマンションの同じ階に住んでいるのに、二年になってクラスが別れてからは殆ど大雅との接点がなくなってしまっていた。おそらく、人生で一番大雅の顔を見ない期間だった。久しぶりすぎて、なんだかうまく話題が見つからなくて、どうでもいいテストの話で間を持たせる。
小学校と中学校は仕方ないとしても、高校まで一緒になるなんて思っていなかったから、お互いに志望校を確認した時は本当にびっくりした。そして入学したら同じクラスになって、更に驚く。
「高校になってまで、由羽と一緒なのかよ!」
大雅は眉をしかめて冗談ぽく嘆いていたけど、私はほっとしていた。大雑把だけど、小さいことを気にしない大雅のふるまいは、いつもいつも、私の心を落ち着けてくれていたから、高校という見知らぬ場所に大雅が一緒に行ってくれるのは、ものすごく心強いことだった。
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