あなたが誰を好きだとしても

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『オレ、好きな人がいる』 『ずっといい感じで、関係を壊したくなくて黙ってたんだけど、苦しくなってきて』 『たぶん、相手もオレが好きだって、知ってる』 『由羽だったら、どう思うかなって』  今日、なんか変だったのはこのせいだったんだ。私はすぐに感づいてしまった。これって、私に相談をするフリで実は私に告白するというヤツだ。まさか、今日会うなんて予想もしていなかっただろうから、しばらくぶりに会った瞬間に、気持ちを告げてしまおうと決めたんだろうか。  胸の奥の奥にしまい込んでいる気持ちをぶっちゃけて言えば、私も大雅のことが好きだ。なんとなくそう思ったのは中学に入ったくらいの時だったけど、四月から急に会わなくなったことでざわつき始めた違和感の正体の答えを認識した時、改めて確信した。だけど、私も同じ理由で大雅に告白するのをためらっていた。幼なじみとしての関係を、壊してしまうのが怖かった。なんでも言える気軽な間柄というのを、それなりに気に入っていたから。  だけどそれが、越えられない壁を作っていることもわかった。寂しいとか、嬉しいとか、会いたいとか、自分の奥底にある本心も、幼なじみという看板があるおかげで素直に伝えることをためらってしまっている。同じフロアで、会いたい時会える距離の存在なのに。連絡先を知ってるんだから、気軽にメッセージを送ればいいのに。久しぶりに会えて嬉しいと、笑顔で言葉にすれば良いのに。  少し迷ってから、ようやく返信を打ち込む。 『待ってると思うよ、大雅が言ってくれるのを』  ウインクをした、かわいらしい女の子のスタンプも一緒に送った。
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