35人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
なあんだ。
大雅がどこかおかしかったのは、誰かに胸を焦がして悩んでいたからか。
大雅のこと、なんでもわかってるつもりで、なんにもわかってないじゃん、私。
だいたい、今までの態度からすれば、大雅が私に好意を寄せているだなんてあり得ないっていう判断が、なんでできなかったんだろう。
なんで、勘違いしてドキドキしちゃったんだろう。
なんで……大雅を好きになっちゃんたんだろう。
ベッドに潜って、声を殺して泣いた。うぬぼれて喜んでいたさっきまでの自分を消してしまいたかった。大雅が誰かを思う姿は想像できる。ぶっきらぼうだけど、優しくて、相手を思いやって。そうやって、今まで私が独占してきた大雅が、これからは他の誰かのものになるのだろうと思ったら泣けてきて仕方がなかった。
ちょっと怖がりでお化け屋敷が苦手。ピーマンが嫌い。小さい頃からスイミングに行ってたからプールが得意。お兄ちゃんに教えてもらったギターを練習中。次々と思い浮かぶ大雅は、急に遠い存在の人になってしまった気がした。今までだって、私だけのものじゃなかったはずなのに。
「待ってよお」
小さな頃、大雅の背中に向かって叫ぶ、自分の姿を思い出した。あの頃、置いて行かれて泣いた時とは違う、苦い涙が再びあふれ出した。
最初のコメントを投稿しよう!