神の願い

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神の願い

 私は、とある雑誌の記者をしている。毎日街を練り歩き、話題になりそうな記事のネタを探している。  ある日のこと。私は郊外にある神社へ向かった。なんでも、その神社でお参りをした者は近い未来願いが叶うと若者の間で噂になっているらしい。  占いやら信仰やらは信じない性分だが、この手の話題は老若男女に関心がある。噂通り願いが叶うなら文句ないが、例えそれがインチキだったとしても、その時はその時で批判的な記事を書けばいい。どっちに転んでもそれなりの反響は望めるであろう。  幸い、ほかのどのメディアも例の噂のことを取り上げていない。うまくいけば独占取材できるだろう。今日は神主に挨拶を伺うことになっている。  神社へ着く。さっそくお参りをすませようと、賽銭箱に小銭を投げ入れ、両手を合わせた。  私の書いた記事が広く後世まで語り継がれますように。  たっぷり願いを込めて二礼二拍手一礼。満足げに顔を上げると、賽銭箱の後ろのほうに小さくなって座っている中年の男に気が付いた。少し不審に思ったが、実際に参拝者の話も聞いたほうがいいと声をかけた。 「こんにちは。私は雑誌の記者をやっております。少しだけお話を聞いてもよろしいですか。」  男は、私の顔を見つめ、飛びつくように口を開いた。
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