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「好きです」
私は蒼くんを呼び止めて言った。
「……ごめん」
蒼くんは溜息をついている。
私はめげることなく、次の言葉を発した。
「理由は?」
「……俺は、小春にはふさわしくないから」
これ、耳にタコができるほど聞いた。
「だからさ、どうしてふさわしくないの? 私は蒼くんが好きなんだから――」
私が詰め寄ろうとすると、蒼くんは顔を真っ赤にして逃げていってしまった。
通算、9回目の告白も失敗した。
蒼くんとは高校の入学式で出会った。体育館に向かう途中で、私の目の前の女子が派手にこけた。スマホを見ながら歩いていたので、完全に彼女の自業自得だ。でも、目の前で膝から血を出しているのに、何もしないわけにもいかず、私は彼女を横抱きにして立ち上がった。いわゆるお姫様抱っこだ。
ちなみに、私は女子にしては背が高く、中学時代ソフトボール部で鍛えていたので、小柄な彼女を横抱きするのは簡単だった。
そんな私を見て周囲はどよめいたが、その中で「王子様かよ!」と失礼にも大笑いしたのが蒼くんだ。
その後、同じクラスだと知り、話すようになった。
蒼くんと一緒にいるのは心地よかった。くだらないことを遠慮無く言えるし、何より、笑顔が可愛くて癒やされるのだ。そう、一年生の頃は、ただそう思っていた。
でも、二年生になり、クラスが別れた。少し距離が出来た分、蒼くんのことをよく考えるようになった。そして、よく見るとかっこいいかもしれないと、今さらながら気が付いた。一年の頃は同じくらいだった背丈も追い越されていて、並ぶと私は少し視線をあげなくてはならない。これって、男女の目線だよねって、気付いたらもうダメだった。何かドキドキが止まらなくて、側にいられないのが寂しくて。
だから、告白をしようと決めた。
初めて人に想いを伝えることに緊張していた。ただ、蒼くんもたぶん、同じ気持ちなんじゃないかなって、実は楽天的に思ってた。だって、クラスが別れてからの蒼くんは、私が見つめると顔を赤くするからだ。それって、意識してくれてるってことでしょ?
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