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結果は、振られた。でも、納得がいかなくて理由を聞くと、「俺は、小春にはふさわしくないから」と答えてきた。逆なら仕方ない。私が蒼くんにふさわしくないのなら、諦めようと思う。けれど、蒼くんが私にふさわしくないって、どういうこと? そんなこと言われたら、引けるわけがない。
「意味わかんない。もっと、分かるように説明する。ほらっ」
私は、蒼くんを廊下の壁に追い詰める。
「だ、だからっ、いや、まずいって」
蒼くんは顔を真っ赤にして、私の視線から逃れるように斜め上を向く。
「逃げるな!」
だんだん腹が立ってきて、私は両腕を勢いよく壁に付いた。いわゆる壁ドンだ。まぁ、されるんじゃなくて、してる側ってのが、何とも私らしいんだけど。
「ひえっ、小春……お前、自分がどれだけモテるのか気付いてないのか?」
「私がモテる?」
蒼くんの言葉に、私は首をひねる。
「私、男子からモテたこと、今まで一度も無いよ」
「だろうな、それは俺もそう思う。けどなっ、女子から熱狂的にモテてんだよ!」
蒼くんが、私に向かって指をさしてきた。
「……ん? 女子に?」
「そうだよ。小春さ、入学式で怪我した奴をお姫様抱っこしただろ。あれを見た女子達が、小春のことを『王子様』扱いして憧れてんだよ」
俺、女子に殺されたくねぇ……と蒼くんは涙目になっている。
「で、でも、女子にも、別に告白されたことないよ?」
「はぁ、小春ってさ、なんつうか、鈍いよな。こう繊細な心の機微っつーものが欠如してるというか」
「喧嘩売ってる? いいよ、買おうじゃん」
「ほら、そういうところ。思ったら真っ直ぐに行動しちゃうところは、良いところではあるけどさ……」
蒼くんの指摘に、ちょっと恥ずかしくなる。確かに、好きだと思ったから告白しちゃってるわけだし、喧嘩売られたと思ったから喧嘩腰になっちゃうし。
「小春は女子達の憧れなの。そんで女子達はさ、抜け駆け禁止条例ってやつを守ってるんだよ。小春はみんなのものってわけ。これで分かった? 学校の王子様を、俺が独り占めなんかしたら、女子に何されるかわかったもんじゃない」
そういうと、蒼くんは私の腕の中からあっという間に逃げてしまった。
それ以降、何度も告白し、何度も同じような押し問答が繰り広げられた。
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