序章 封魔の剣

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序章 封魔の剣

 その男は、町をぐるりと取り囲む城砦をひと目で見わたせる丘の上に姿を現した。  上半身裸で、背中に巨大な剣を背負っている。裸の上半身の皮膚には、びっしりと奇妙な刺青がところかまわず彫られていた。刺青はすべて失われた古代文字で描かれ、様々な文様や紋章があしらわれている。見るものが見れば、それらはすべて魔法の文字であることが判別できるだろう。じじつ、その魔法文字でもって男は身を守られ、酷暑にもまた極寒の地でも服はまとう必要を感じなかった。  男は背が高く、また全身これ筋肉の塊といった風貌である。太い首の上に載った頭はまるく、がっしりとした顎がどことなく猛獣を思わせた。どんな剣士でも、男の前では子供同然であろう。  微風が、男の長い髪をなびかせている。  男は丘の上からその町をながめ、微笑を浮かべた。  ゆっくりと一歩を踏み出し、町へと近づいていく。
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