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「あー、雨っていいな~」
「…え?ホントに言ってんの?レン?」
「いやーいいじゃん!この傘にあたる雨の音!歩く時になる音!カエルの声!何から何まで良くない?しかも、これは雨の日にしか聞けないときた!」
「レン親父くさい…」
「そんな事言うなよな…ユメは嫌いなのか?雨?」
「嫌いよ!体は濡れるし、ジメジメするし、髪はゴワゴワする。レンが雨を好きって聞いた時耳を疑ったもん」
これが普通だ。普通の人は雨を嫌う。そう考えると俺は本当に親父臭いのかもしれない。
ゴロロロロビシャーン 雷の音が近ずいてきていた。
「あーもう雷も嫌いよ。」
「はははっ雷は怖いよな…こういうユメを見れるのも貴重だけどよ。いつも凛々しい学校のアイドルが幼馴染の前だとこうも変わるところを…」
「んーうっさい!ちょっと雨宿りしましょ。雷が通り過ぎるまで。」
「分かった、じゃああそこのコンビニの中にでも入るか?」
「分かったわ。早く行きましょう。
「怖がりだなぁ」
「あんたの前だけよボソッ」
「なんて?」
「分かったわ、じゃあ早く行きましょう。」
「はいはい」
「レンって高校入って好きな子出来た?」
「ん?まぁいないかなぁ…1人昔から好きな奴がいるけど近づけねえんだよなぁ」
「そうなんだ…私も、同じ感じ」
「そーか」
この時彼女はここまで鈍感な男がいるとはと本気で思ったらしい…俺もこんなに鈍い女とは…と思っていたのだが…
ゴロロロロビシャーン
「…今のは強かったな~ってどうしたんだ?」
気づくと彼女は俺の手首の裾を握っていた。
「怖いか?」
「うるさい!」
「はいはい、好きなだけそうしてていいよ」
その体勢のままどれくらいたっただろうか…気づけば雨は上がり日も傾いていた。
「これだよ、これ」
目の前には虹がかかっていた。
「俺はこれを見たいからって言うのもあって雨が好きなんだよ。」
「確かに綺麗…久しぶりにこんなにゆっくり虹を見たわ…」
「どうだ?好きになったか?雨?」
「えぇ少し…」
「そっか…」
「ねえレン。私好きよ。」
「ん?虹がか?」
「あんたのこと!」
「ん?ん?え?俺?ホントに?」
「えぇ、ずっと昔から大好きよ。」
「俺も好きだよ。ずっと昔から。」
俺は同しようもなくなってユメを抱きしめた。それ以外に思いつかなかった。
「雨の中じゃこの声も聞こえないでしょ?」
「そうだな。」
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