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私は手中のガラス片を振り下ろした。
彼の首に当たり皮膚が裂ける。血管を切り裂き血が噴き出す。死の痙攣をする。
私は叫んだ。喉から血が出ても、声が出なくなるまで叫んだ。
私がしたことは正しいのだろうか。
彼を救うために彼を殺した。
そもそも私が彼にもっと何かしてあげればよかったのだ。彼にもっと寄り添い、話しかけ、一秒でも長くともに過ごせば、彼は私を裏切らなかったのではないのだろうか。彼をこんな辛い目に会わせる必要もなかったのではないのだろうか。
悪いのは私だったのだ。
後悔してもし切れず、悔やんでも悔やみきれない、私の罪だ。
愛した彼を苦しい目に合わせ、愛した女に殺されるという、彼の人生に惨劇を加えた私の罪は死ぬだけでは到底償えない。
来世でも私はこの罪を背負う。背負わなければならない。
もし叶うのなら、来世でも君と会いたい。
償えない罪を、償えないと知っていてなお償わせて欲しい。
君のためなら私は何でもできる。私は君の願いを聞き、君を殺した大罪人だ。
涙はもう枯れた。彼の顔は蒼白となっていた。
「来世でも君を、この罪を私は忘れはしない。絶対に!」
彼を殺害したガラス片を大きく振りかぶり、自分の喉をめがけて。
振り下ろす。
女の喉から血が噴き出し、やがて息絶えた。
私が死んだ理由はーーーー。
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