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死を謳《うた》う木偶《でく》
私は死んだと叫んだ
いいやお前は生きている、まだ叫ぶ元気がある、同じじゃないか、と
歩道の子どもに諭された
私は死んだと言った
いいやお前は生きている、まだ喋る気力がある、同じじゃないか、と
籠のオウムに諭された
私は死んだと呟いた
いいやお前は生きている、まだ声がある、同じじゃないか、と
画面の向こうの人間に諭された
私は死んだと泣いた
いいやお前は生きている、まだ涙がある、同じじゃないか、と
夜泣きの赤子に諭された
私は死んだと狂った
いいやお前は生きている、まだ心がある、同じじゃないか、と
腹の胎児に諭された
私は死んだと繰り返し
最期に叫ばぬ、喋らぬ、声のない
泣けない心無い木偶になった
私が死んだ理由
それは世界への拒絶であった
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