1.彼女

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ああ、まただ。 教室の片隅で、見つめても見つめても届かない。 だって彼が見つめている先には、いつもあの子がいるんだから。 あの子は誰よりも明るい。 彼の幼馴染、諏訪 麻友ちゃん。 麻友ちゃんは小学生からの私の友達。 昔から、私が1人ぽつんとつまんなさそうにしていたら、笑って手を引いてくれる。 瞳が大きくて、目が合うだけで吸い込まれそうな気分になる。 初めて会った頃は、こんなお人形さんみたいな可愛い子がこの世に存在しているんだ、と小学生ながらに思ったものだ。 一度でいいから、あの子みたいな子になれたら、どんなに良かったんだろうか。 そう思いながら、何度も何度もあの子を見つめる彼を見つめた。 「麻友ちゃんは、好きな人いる?」 お昼休み、一緒にお弁当を食べながら麻友ちゃんに聞いた。 麻友ちゃんは箸をくわえながらきょとんと首を傾げる。 長い間一緒に居たのに、今まではっきりと聞いたことがなかったから、びっくりしているみたいだった。 「どうしたの急に」 「え? だって、もう卒業近いでしょ? 今までこういうこと聞いてなかったから、いるのかなぁって思って」 真剣に聞いた言葉をわざとぼやかした。 笑って、軽い恋バナとでも言いたげに。 「いるよ」 「え」 「亮介」 目を見開いた。 ああ、やっぱり彼のこと。 好きなんだ。 私が落胆に近い顔をしていたのか、麻友ちゃんが笑いだす。 「ふふふ、冗談だよ」 「え?」 「そう言ったら、どんな顔するのかと思って。あたしは誰もいないよ。強いて言うなら、一番好きなのは……」 指をピッと私にまっすぐ向けてきた。 突きつけられた指に呆然としていると、麻友ちゃんは小さい頃から変わらない世界一可愛い笑顔で笑った。  
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