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ああ、まただ。
教室の片隅で、見つめても見つめても届かない。
だって彼が見つめている先には、いつもあの子がいるんだから。
あの子は誰よりも明るい。
彼の幼馴染、諏訪 麻友ちゃん。
麻友ちゃんは小学生からの私の友達。
昔から、私が1人ぽつんとつまんなさそうにしていたら、笑って手を引いてくれる。
瞳が大きくて、目が合うだけで吸い込まれそうな気分になる。
初めて会った頃は、こんなお人形さんみたいな可愛い子がこの世に存在しているんだ、と小学生ながらに思ったものだ。
一度でいいから、あの子みたいな子になれたら、どんなに良かったんだろうか。
そう思いながら、何度も何度もあの子を見つめる彼を見つめた。
「麻友ちゃんは、好きな人いる?」
お昼休み、一緒にお弁当を食べながら麻友ちゃんに聞いた。
麻友ちゃんは箸をくわえながらきょとんと首を傾げる。
長い間一緒に居たのに、今まではっきりと聞いたことがなかったから、びっくりしているみたいだった。
「どうしたの急に」
「え? だって、もう卒業近いでしょ? 今までこういうこと聞いてなかったから、いるのかなぁって思って」
真剣に聞いた言葉をわざとぼやかした。
笑って、軽い恋バナとでも言いたげに。
「いるよ」
「え」
「亮介」
目を見開いた。
ああ、やっぱり彼のこと。
好きなんだ。
私が落胆に近い顔をしていたのか、麻友ちゃんが笑いだす。
「ふふふ、冗談だよ」
「え?」
「そう言ったら、どんな顔するのかと思って。あたしは誰もいないよ。強いて言うなら、一番好きなのは……」
指をピッと私にまっすぐ向けてきた。
突きつけられた指に呆然としていると、麻友ちゃんは小さい頃から変わらない世界一可愛い笑顔で笑った。
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