2.彼

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りょうちゃんは、明るくて元気で活発。 小学生の頃からそれは変わらなくて、一緒に居ると自然と笑ってしまう。 そんな人だ。 好きになったのは、あっという間だった。 人は恋に落ちる瞬間、稲妻に打たれたかのように体中がビリビリするという。 私は、その言葉を小学生で体感したのだ。 小学4年生の遠足。 みんな並んで歩いているのに、1人列からはぐれてしまったことがある。 先生も友達も見えなくなって、1人で知らない道を歩いた。 学校に戻りたくても分からないし、前に進みたくても後ろに戻りたくても、自分がどこに行くか分からない。 そんな恐怖で動けなくなって、ついに道の端っこでうずくまって座ってしまった。 すると遠くから私を呼ぶ声が聞こえて、涙でぐちゃぐちゃの顔を上げると、りょうちゃんが汗だくで走ってきてくれたのだ。 私の目の前に来て、泣いている顔をまじまじと見つめられた。 恥ずかしさと安堵で、顔を隠す。 そんな私の手を無理矢理どけて、自分の手で私の涙を拭ってくれた。 ぐいぐいごしごし、こする力は容赦なくて痛かったけど、あの時は本当に嬉しかった。 あの涙を拭ってくれた瞬間、あの時私はりょうちゃんを好きになっていた。 先生たちのもとに行くときも、私の手をしっかり握りしめて引っ張ってくれたりょうちゃん。 手のひらの感触は今でも忘れられない。 あたたかくて、優しくて……少し震えていた。  
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