2.彼

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りょうちゃんのその言葉を聞いて、ぼんやりと思い出す。 教室、廊下、いろんなところでよくあること。 麻友ちゃんと話していると、麻友ちゃんの後ろにいるりょうちゃんと目が合う。 頻繁に合うなって思ってから、もう何度も何度もそれが繰り返される。 りょうちゃんが麻友ちゃんを見つめているのが視界に入って、悲しくなるけど無理矢理笑顔を浮かべる。 すると、りょうちゃんも気付いて笑ってくれる。 彼が私のことを見つめてくれる日が来るんだろうか。 いつか麻友ちゃんみたいになったら、好きになってくれるのかな。 そう思いながら、ずっと2人を見てきたけど……結局りょうちゃんは麻友ちゃんがずっと好きなままだ。 そして恐らく……それを自分自身が気付いていないのだろう。 無意識に麻友ちゃんを目で追って、見つめている。 自分の気持ちに気付いていないんだ……まだ。 いや、もしかしたら……気付きかけているけど必死に自分で気付かないようにしているのかもしれない。 りょうちゃんは、優しい。昔から、仲間外れとかそういうことが大嫌いだった。 だから、きっと……そういうことだろう。 ……なら、私から言ってあげよう。 「りょうちゃん」 「ん?」 「きっと……りょうちゃんは、麻友ちゃんのこと好きだよ」 私のことを気にかけてくれて、気付かないようにしているなら……私から教えてあげよう。 今まで、長い間2人に色々助けてもらったし、毎日楽しい日々を送らせてもらった。 これは私からの卒業祝い。 笑って告げる私に、りょうちゃんは唖然としていた。 でも、それを言った瞬間、顔が朱を帯びたのだ。 自覚した瞬間を初めて見た……と少しだけ苦笑いを浮かべてしまった。 彼はいつも、彼女と話すときに私に背中を向ける。 君の肩越しに見えるのは、 私の大切で大好きな憂鬱。  
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