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「うぅー、寒い。さっさと飲みましょうか」
「そうだね。一年間お疲れさま」
「お疲れさまでーす!」
遊歩道のベンチで祝杯をあげた。
コンビニで買ったおでん、缶ビール、さきイカや酢漬けのタコなどが所狭しと並ぶ。
彼らが居酒屋を利用しないのも、風避けができそうな場所を選ばないのも、ちゃんとした理由があった。
この場所は高台になっていて、見晴らしがとても良いのだ。
下の方には幹線道路が通っているが、車通りはそれほど多くない。
ここは町明かりを眺めつつ、静かに飲み明かす事の出来る穴場スポットなのだ。
この寒さも酒が回れば心地良いものとなる。
彼らはそれを経験則で把握済みだ。
街灯は少し離れているので、スマホのライトを併用する。
なので、ベンチには2つの灯りが点っている。
「いやぁ働いたなぁ。あんなに毎日薬剤飲んでたら、体壊しちゃいますって」
「まぁ、平気じゃない? 一応健康ドリンクの試作品だし」
「お腹ん中で化学反応起こして、未知のアイテムが生まれたり?」
「未知の……って、例えば?」
「不老不死とか」
「あり得ないよ」
「じゃあ逆に、劇薬とか」
「うっ……。縁起でもない。今おでん君を愉しんでるんだよ?」
「あぁ、これは失礼しやした……。ごめんよ、染み大根さん」
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