最終話  事の発端

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「大丈夫ですか、怪我はありませんか?!」 「アイタタ。ありがとう、済まないねぇ」 「ゲンジロウさん、こっちの運転手も無事です!」 「すまねぇなアンちゃん。助かったよ」 ゲンジロウ、カイトが運転手を引っ張り出した。 幸い両者とも怪我は軽い。 誰もが安心したのだが……。 ーーカプリ。 ゲンジロウは弾みで相手を噛んでしまった。 男性の腕かうっすらと血で滲(にじ)む。 「あ、ごめんなさい! 僕の歯が……」 「いやいや、気にせんでください。これしき大したことは……ッ!?」 「おじいさん?」 「あ、ァガァァアアーー!?」 ついさっきまで元気だった老人が、泡を吹いて痙攣を始めてしまった。 喉を爪でガリガリとひっかき、顔は苦悶の表情で歪む。 騒ぎを聞き付けてカイトがやってきた。 「ゲンジロウさん、どうしました!?」 「大変だ、事故のせいかな。急に苦しみだして……」 「これはヤバそう。救急車呼びましょう!」 「スマホはベンチに置いてきたよ、カイトは?」 「あー……オレもです」 「ともかく、助けを呼ぼう。僕らだけじゃ手に負えないよ」 「そうですね。大声を出しましょう!」 2人は大きく息を吸った。 ゲンジロウはそのとき、視界がうっすらと赤く染まるのを感じた。     
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