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「先食べてて良いってさ。だから僕はいただくよ」
「そうなのか。じゃあ父さんも食うかな」
「いただきまーふ」
サクリ。
こんがり焼いたパンから魔法のような音が鳴る。
僕は昔からこの音が大好きだった。
何よりも食べている実感を与えてくれるからだ。
父さんはウィンナーを両端から食べ、最後に真ん中を頬張る。
ミカはまだ眠たいのか、薄眼のままでヨーグルトを口に運んでいる。
「今日は天気が良いし、ちょっと遠出しないか? 遊園地、動物園、緑地公園なんかもいいな」
「いいね。僕は今日予定無いよ。ミカは?」
「アタシだめー。今日は夕方まで練習があるのー」
「そうなんだ。だから早起きなんだね」
「先生がやる気出しちゃってさー。『今度の大会は優勝するぉお』とか言ってんの」
「じゃあ大分しごかれるよね」
「あーぁ。前の先生の方が良かったなぁ」
ミカはぼやきつつ、カップに入ったスープを啜り出した。
それを見て父さんも鏡合わせのようにして飲み始める。
「じゃあお出かけは明日にしようか。それだったら良いだろう?」
「うん。日曜は練習無いから大丈夫だよ」
「よぉし。たまには奮発して、お小遣いいっぱいつかっちゃおうか……」
「父さん! スープこぼれてるよ!」
「え……本当だ!」
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