第1話 賑やかな食卓

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父さんの脇腹からコーンスープが溢れ、床に滴っていた。 どちらかというと左半身の損傷が激しいから、飲食物が漏れてしまいがちなのだ。 「かぁさーん。布巾。布巾持ってきてー」 「あらぁ。お父さんどうしたの?」 「食事中についウッカリ体を揺すってしまってね。床を汚してしまったんだ」 「そう……。でも、ちょっとした汚れくらい構わないじゃない。今更でしょう?」 母さんがため息交じりに言った。 それもそのはず。 何せ室内は血と泥とホコリで、凄まじい荒れ様なのだから。 僕たち住民が居なかったら廃墟そのものにしか見えない。 「ああ、そうだね。つい人間の頃の癖が……」 「しっかりしてくださいな。子は親を見て育つんですからね」 「新環境ってのは若い方が順応しやすいんだよ」 「まぁそうだけどもね」 母さんは箸を片手に座り、スムーズな動きでテレビを点けた。 バラエティ風のニュース番組ばかりが放送されている。 矢継ぎ早に回されるチャンネル。 その一瞬一瞬に映し出されたのは、ダイジェストで紹介されるサッカー選手たち、討論を繰り広げるおじいさんたち、オシャレスポットを紹介するアナウンサーだった。 もちろん全員がゾンビだ。 「予報やってないかしらね。時間帯が良くないのかしら」     
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