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髪は風で靡く
目の前にいるショートカットの少女の髪が靡く。窓が開いている所為で、風が放課後の教室に吹き込む。
風に気にせず、少女はノートと教科書を見つめる。乱れた髪を直すことなく黙々と。思わずリヨは見惚れてしまう。
リヨは宿題が終わり、机の端に置いておいたオレンジジュースを飲む。
また少女の髪が靡いた。シャンプーのようなほのかな鈴蘭の香りがする。彼女の香りだ。
…バタン
ショートカットの少女、カナエは教科書とノートを勢いよく閉じる。
「終わった!リヨ、はやいな。教科書読み込んでしまったよ。」
飲みきったオレンジジュースの紙パックを潰しながら、リヨは言う。
「カナエは、考え過ぎなんだよ。もっと柔軟に考えれば…」
「私の頭が固いって、この口が言いましたか??」
すかさずカナエは言ってくる。椅子から立ち上がり、両手でリヨの?を潰す。時々カナエはこのようなことをしてくる。リヨの口はきっとイラストに書いたような蛸みたいになっているだろう。カナエは、微笑みながらイタズラっ子のような視線をリヨに降り注ぐ。
「…ごめん。」
カナエはリヨから両手を離し、片付けをする。
「リヨ、面白いからつい。口が蛸みたいだったよ。…さぁ、帰ろう!」
リヨも立ち上がり宿題を片付ける。
カバンの中に持ち物を入れ、カナエの後ろを歩き教室を出る。 このような時間がとても愛おしい。カナエの残り香が微かにする。
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