小島さんはロボット。

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 僕は、正直言ってそこまで盛り上がれなかった。人に似せてあるとはいえ、人ではない。いちいち突っかかる気もないが、周りの連中のように騒ぎ立てる気にもなれなかった。  この時代、人型のロボットというのは、あまり珍しい物ではなくなってきた。鉄腕アトムの時代から、日本人にとってロボットは特別な存在であり、人間を模して作る事に躍起になっていた。そんな中、数社の開発チームが競って研究し、ここ数年でロボット技術はめざましく進歩したのだ。  今回この学校に来たのもその内の一社、小島重工のモデルだ。新興の会社で、面白そうな事には次々手を出していくユニークな会社だ。  まあ、珍しくないと言っても、実際に目にするのは僕も初めてだ。ちょっと前の時代における、「田舎の外人さん」という感覚と言えば分かるだろうか。TVとかではよく見るけど、実際に見る機会が少ない、そんな感じだ。  朝の会が終わって、小島さんはあっという間に人の群れに埋もれた。皆珍しい物が見たいのである。 『どこで作られたの?触って良い?ホント綺麗だね!色白~い!スペックは?私佐藤!鈴木!よろしくね!スリーサイズは?』  全員が一度に喋る。その全てに一々笑顔で対応している。 「東北にある工場で製造されました。どうぞ。ありがとうございます。そのように設計して頂きました。普通の女子高生なみの能力と思って頂ければ。佐藤さん、鈴木さん、よろしくお願いします。調整がききますからご要望があれば。」  わっと盛り上がる。新しいおもちゃが投入された気分。そんなに騒ぐような事なのかね。一人教室の隅で僕は呆れていた。  退屈な授業中、僕はいつものように視線を泳がせ、そして今日は小島さんに行き着く。  確かに美少女に見える。透き通るような白い肌、整った目鼻、顔立ち。黒くてサラサラした髪、そこから垣間見える細く白い首筋。静かな教室に微かに聞こえるモーター音。襟首から見え隠れする鎖骨、年頃の女の子よりは恵体な体つき。すらっと伸びた色白の指先がシャーペンを握る。スカートからは二本の白くて長い…っと、見過ぎだ、僕。変態か。  綺麗だ。そりゃそうだな。技術者含め、理想という理想を全部詰め込んで作っているんだから。立体になった美人絵みたいなもんか。  先生に当てられて、小島さんが答える。正解だ。それもそうだ。勉強するまでもなく、授業内容なんてインプットされているだろう。
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