退屈しのぎに

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 「雨の日には要注意。とても不思議なことが起きるから」  タクシー仲間の間で、囁かれている都市伝説。  今日はあいにく、前も見えないような土砂降りである。  そんな土砂降りの日でも、あるタクシー運転手は車を走らせていた。  やっと乗ってくれたお客さんは、髪の長い女性だった。  「・・・実は私、幽霊なんです」  その女性はうつむいたまま蒼白い顔で言った。  「そうですか、奇遇ですね・・・。実は私もなんですよ」  タクシー運転手は、退屈しのぎに答えながら、女性を墓地まで連れて行った。  降ろそうとして、後ろを振り向くともう女性の姿は無かった。  タクシー運転手は、舌打ちをしてまた走り出す。  次に乗せたのは、瞳の大きな男性だった。  男性は言う。  「・・・実は私は、異星人なんですよ」  タクシー運転手は、退屈しのぎに答える。  「へぇ、奇遇ですね、実は私もなんですよ・・・、と言いたいところなんですが、あいにく私は地球人なんです」  タクシー運転手は、その男性を空港まで連れて行って降ろした。  今度はちゃんと代金をもらうことができた。  次に乗ってきたのは、目つきの悪い男だった。    
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