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「あ」
思わず声を上げるがどうにもできない。
ため息が出た。
死んだら楽になるんじゃ無いかと思ったことがあるが、以外と大変だった。
生きていたときできたことが何もできない。
いつまでもここに居ても仕方ない。
そう思い部屋を出た。
せっかく死んだのだから何か面白い事をしよう。
私は会社へ向かった。
会社の私の席の前に立った。
普段なら仕事が積まれている机が空っぽだった。
私は仕事をしなくても良いようだった。
辺りを見回し、目的の人を見つけ黙々と仕事をするその背後で画面を見た。
「うわ・・・まじか」
画面はアニメ動画を流しながら仕事をしていた。仕事が速いみんなの憧れの彼が片耳イヤホンでアニメを見ていた。
「まあこんなもんか」
意外な一面を見て少し冷めた。
私はこの人が好きだった。
告白しなくて良かった。私はアニメを見ないから話はきっと合わなかっただろう。
彼は急に立ち上がった。慌ててよけると彼はアニメの画面を閉じて給水室に向かった。
私はついて行きコーヒーを入れる彼の顔をのぞき込んだ。
こんなに近くで見たことは無い。
彼に私は見えていない。
私は気付かれないのが面白くなり一日中彼について回った。
アニメを見ている以外はとても真面目だ。それに優しく面白い。
話が合わなくても話しかけて見れば良かったかもな。
一日が終わる頃にはそう思い始めていた。
彼とはやっている仕事が違うため共通点が無かった。
話すことも少なかった。
私はぼんやりして居ると先輩はいなくなっていた。
というより仕事場は誰も居なくなっていた。
建物内も外も真っ暗
「あれ? いつの間に?」
キョロキョロして窓から会社を出ようとすると
「ねえ、君も彼に殺されたの?」
声をかけられ振り返るとスーツ姿の男がいた。
他にも男女数人。全員死んでいる。目の前に見えるがなんとなく分かる。
「彼って?」
「今日君がずっと見ていた男だよ」
「彼は生きていたとき好きだった人。私は何で死んだか分からないの」
「そう」
話していた男は振り返り、他の人たちと目を合わせると頷き奥へ行こうとした。
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