私は死んだ

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「待って、何があったの?」 男達は振り返った。 「俺達は殺されたんだ。彼に。俺は毒を盛られた」 「私は首を絞められた」 「私は腕を切られた」 「俺は何回も包丁で刺された」 驚いて声も出なかった。 「彼がそんな事するはずないでしょ?」 「されたんだよみんな」 鋭く光る目に睨まれ後ずさってしまう。 「本性はそうなの。あなたは違うならいいよね」 そう言ってみんなは消えた。 彼がそんな事するなんて 呆然としてしばらく動けなかった。 何で私だけ覚えていないの? 会社を出て屋上で座っていた。 みんなが天に昇っていた場所に戻って成仏してしまおうか? けど今更場所が分からない。 どうするか悩みながら車の光が行き交う町並みを見た。 「あの人は死んでる。あの人は生きてる」 指を指しながら歩いている人を見ていた。 「花占いか何か?」 「私が何で死んだか考えてるの」 私は振り返らずに答えた。声の主は死んでいるに決まってる。 見る必要はなく指さし 「この人は死んでる」 そう言うと声の主は笑った 「失礼だな」 声の主を見ると警備員の格好をした若い青年。 「君死んだんだ。なんでか分からないの?」 「分かったらこんな所に居ないよ」 「どうして死んだか知りたいの?」 「うん、それを知れたら成仏できる気がする」 「そうなんだ」 男は楽しそうに言った。 「何でわたしにかまうの?」 「屋上の防犯カメラに写ってたから、気付いて欲しいのかな? って思って」 「そうだね、私の死体を見つけて欲しい」 男を見るとうーんと屋上の柵に寄りかかった。 「どこで死んだの?」 「わかんない」 「君は誰?」 「雪宮幸。この会社で働いていた23歳、営業課」 「そういえば、女性が一人無断欠勤してるって話が合ったな。君だったのか」 「好きで休んでるんじゃ無いよ」 私は目を道路に向けゆっくり目を閉じた。 瞬きしただけのつもりだった。しかし目を開けると陽が高く昇っていた。 またか。 時間が飛ぶのは少しなれた。 生きていたときより時の流れが速いようだ。 家に戻ってみると、母が私の部屋で泣いていた。 部屋を見ると少し片付いて居た。 瞬きをすると部屋はがらんと片付き母が部屋を出て行こうとするところだった。 慌てて後を追うと葬式会場に着いた。 死体の無い私の葬式だった。
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