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葬式場には入れなかった。
なぜだか全身がそれを拒んだ。
私はまだ死んでいない。ここに居る。
なんで死んだの?
どこで死んだの?
私の体はどこにあるの?
必死に思い出そうとしたが思い出せない。
私は分からないまま家族に見送られてしまうのだろうか?
そんなのは嫌だ。
急いで会社へ戻った。
警備室に入るとこの前の青年がいた。
「ねぇ、なんで私が死んだか分かる方法は無いの?」
「知らないよ。それより不法侵入だよ。急に駆け込んで来るから慌てて止めに行こうとしちゃったじゃ無いか」
青年は呑気に話していた。
「今日、私のお葬式なの」
「ご愁傷様です」
「そうじゃなくてっ!」
あーもうと頭を抱えていると青年は言った
「成仏すると分かるって言うよ」
「そうなの?」
青年はにやりと笑った
「嘘なの?」
私が聞くと青年は防犯カメラの画面に目を向けた。
「霊を成仏させるための口実じゃないかと俺は思ってる」
「じゃあ分からないの?」
「良いんじゃ無いの? ほとんどの人はそうやって成仏するらしいよ。生まれてきた時もそうでしょ?」
考えるとその通りだ。死ぬなんて通過点だ。生まれたときと同じ。
「でも私は知りたいの!」
生まれた理由を知りたいのと同じ。私は何で死んだのか知りたかった。
埒があかないと思い警備室を出て、私の働いていた一室へと向かった。
そこに私の机はもう無かった。そして彼の、私の好きだった人の席も。
「あれ?」
「彼は死んだよ」
この前会った男がいた。
「当然だよ」
「彼は死んで当然」
「俺達がやったんだ」
言葉が出ない私を見て笑っているのか、彼を殺せた喜びから笑っているのかは分からない。
けど彼らは不気味に笑っていた。
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