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急いで葬式場に戻ると私の葬式は終わっていた。
家族も誰も居なかった。
私は一人だ。
生きていても、死んでも一人だ。
私はどこに行けば良いの?
悲しみや寂しさがあったが泣くことはできなかった。
実家の場所は
ゆっくりと歩き出し実家へと足を向けた。
他に行く場所なんて無かった。
実家があるだけまだマシなのかも知れない。
また何日か経った。
どれくらい経ったかは分からない。
この前とは別の場所。
天へと向かう人々の列が見えた。
私は恋うようにそちらに足を向けた。
他に向かう場所なんてない。
死んだら死人が行くべき場所に行くんだ。
そうするのが自然の流れ。
もう死んだ理由なんてどうでも良い。
向かう途中にその列を見る男を見かけた。
大分歳をとった着物を着た男性だった。
「あなたは成仏をしないのですか?」
興味があった訳では無い。ただ同志が欲しかった。
「おお、俺はここで海に溺れないよう子供を見守る役目があるからのう。毎年溺れる子供が出るんだ。その度すぐ助けに行くんよ」
男性は笑顔で列に目を戻した。
「それって」
「君はここでやり残した事が無いならお行きなさい。俺は子供達を助けないと」
「はい」
あぁ、思い出した。
私は役目がないこの世界に嫌気がさして死んだんだ。
自分の好きなこと、やりたいことが見つけられ無かった。
だから死んだんだ。人気の無い森で、首をつった。
せめて好きだった木々の中で死にたかった。
きっと死体は動物に食べられているか、つられたまま腐っている。
場所はもう分からないけど。
私は死にたくて死んだんだ。
「頑張ってね、仏様」
「ああ」
男性は笑顔で私を見送り手を振った。
私は生きていても、死んでもやることが無かった。成仏した先でも私はきっと手持ち無沙汰なのだろう。
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