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「へぇ、今の人間の葬式ってこんな感じなのか」
色とりどりの花が咲く花畑に囲われた大きな社。ここにはこの世界を創ったと言われる神と、それを世話するために神になった元人間とが住んでいた。
黄色いフード付きマントを着ている、赤毛で華奢な男が、青銅の鏡を覗き込んでいる。そこには葬儀を執り行っている人間の様子が映し出されていた。
男はそれを見て思う。人間が最期の時にフード付きのマントを着せられるのは、自分に似せているのだろうと。
彼は知っている。自分が神に助けられ、この社に来たときのことが人間たちの間で伝説になっていることを。あの時も、確かに自分はこのマントを着ていて、それで人間たちは死んだ後神の元へ行けるようにと、願掛けか何かでそう言う風習が出来たのだろう。
ぼんやりと考え事をしていると、背後から誰かが抱きついた。
「はすたぁ」
その声に、ハスターと呼ばれた彼は笑顔を浮かべて振り向く。
「どうなさいました? アザトース様」
背中にしがみついているのは、手入れをしやすいように常磐色の髪を短く纏めた、背の低い人物。ハスターがアザトースと呼んだこの人物、いや、神が、この世界を創ったと言われている。
アザトースは言葉にならない声を出しながら、ハスターに甘える。ハスターはアザトースを膝の上に乗せ、一緒に青銅の鏡を覗き込む。
不思議そうな顔でじっと鏡を見るアザトースに、ハスターが言う。
「死せる人間に、神の祝福を」
しかしアザトースはまともな言葉をしゃべりはしない。ハスターは鏡に興味を持ったアザトースにそれを渡し、抱きしめる。
誰よりも愛おしい白痴の神を。
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