第一話 裏町の兄弟

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第一話 裏町の兄弟

「お前ら…これは一体、何の真似だ?」  青年は、鋭い目つきで周囲を見回しながら、地を這うような声で尋ねた。歳は十代後半から二十代前半というところだが、放つオーラは猛者のそれだ。  そのすぐ隣にはブルーの大きな瞳の少年が立っていて、こちらは青年と呼ぶには未だ早く、十代半ばらしき幼さがある。  一方は殺し屋のように鋭い濃淡の瞳、もう一方は少女のように愛らしい大きな碧眼という、目つきこそ対照的だが、二人は揃って黒髪で顔立ちもそっくり。誰が見ても兄弟だと一目で分かるほど似ていた。少年は明らかな不安や焦燥感を顔に滲ませ、青年は溢れる憤怒を隠す様子も無い。  少し離れて彼らを囲む者達は十数人。漏れなく全員が青年を睨み返している。歳も背丈もバラバラで、ただ、少なくとも「育ちが良くない連中」である事だけは誰の目にも明らかな風貌だ。いわゆるギャング達の中の一人が、ボスである――否、たった今までボスであった相手に対して答えた。 「俺たちには金が要る。そのためにお前達の情報を売っ…」  言い終わる頃には男の顔に青年の拳が届いており、瞬く間に男は後ろに向かって吹っ飛んだ。
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