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―――あれから何十年と月日が経ち、青年はすっかり老人と言える歳になっていた。
その傍に、昔、老人が自分で作ったゲームの神様の姿はなかった。
何十年も昔のゲームなど誰が覚えていることだろう。
それも当然のことなのかもしれない。
老人だって、ほとんど覚えてすらいなかっただろうし、もう思い出すこともなかったのではないだろうか。
こうして倉庫の奥からその懐かしいゲームを見つけ出すまでは。
老人はその自作のゲームを見て小さな神と過ごしたあのマンガのようなひと時を思い出す。
今まで何故忘れていたのだろうか。
その思い出はすっぽり穴が開いていた心にきれいに収まっていった。
思い出すと懐かしくなり、またやってみたくもなるものである。
まだ動かせるだろうか、共に丁寧に仕舞われていたゲーム機の本体も取り出し、遊びに来ている孫にゲームをしないかと誘ってみる。
一昔前の古いグラフィックやストーリー。しかし、一時とはいえ神ゲームとまで称されたほどのものだ。妙な懐かしさとあいまって孫も楽しんでくれているらしい。
遊んでいると途中からは、息子も食いついてきて、久々に親子三代そろって楽しい時を過ごせた。
「やっぱりお前は神ゲームだ。ありがとな」
誰に聞こえるわけでもなく小さくつぶやいたはずの老人の声には、『あなたのおかげです』と老人にだけ聞こえる声で、すっかり大きくなって再会することができたその神だけが答えた。
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