異国の蝶

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 林は身を包む全てを剥ぎ取り、それでもロザリオだけは奪う事はしなかった。それは、ある種の興奮材料にもなっていたのだ。神聖なもの程卑猥だと、かの文豪が豪語していた。それを、林は身を以て今感じていた。何も林自身、今ユーリンの胸元で揺れるイエスそのものが神聖であるとは微塵も思っていない。だが、宗教と言うものに縋り付いているユーリンの精神、そしてその精神から来る彼の容貌の悲観的な美しさは、神聖なものに違いなかった。それをこれから犯そうとしているのだ。触れられた事も無いであろう秘部を傷付け、彼の中に眠る本能的な性への欲求を内側から抉ってやるのだ。そう考えるだけで昇り詰めそうになり、林は性急にユーリンの身体をうつ伏せに寝かせ、膝を立てさせ突き出した双丘の隙間に指を捩じ込んだ。余りの暴挙にユーリンは思わず悲鳴を上げ、腰を引いて抵抗を始める。林は平手を二度、三度と、揺れる尻朶目掛けて振り下ろした。目の醒めるような子気味の良い音に混じり、ユーリンの切な気な声が上がる。  遂には観念したのか、ユーリンは腰を突き上げたまま、涙を零し何かを呟いている。消え入りそうな声は聞き取り辛く、しかしそれよりも、既に三本目となった指の蠢めきに合わせ、その呟きが喘ぎとなる瞬間の熱に、林の神経は魘されていた。ユーリンの嬌声は尾を引くような儚さがある。決して本意では無いにしろ、それは男の支配欲をよくよく刺激した。  林はその声を聴いている内に我慢が利かず、柔らかくなった襞を押し拡げ、一気に腰を押し進めた。ユーリンは苦しく短い吐息を吐き出し、痛みから逃れるよう必死でシーツを握り締める。流され受け入れてはいたものの、初めての痛みは相当なもののようだ。だが、手を緩める訳がない。ずり、ずりと肉壁を割って射し込む度に、林もまた悩まし気な吐息を漏らした。身体が侵入者を追い出そうと躍動している様子が、敏感な神経を通じて伝わって来る。その卑猥な蠢きが、ゆるやかだった律動のスピードを上げてゆく。我を忘れ、林は狂ったように欲望をぶつけた。ユーリンは激しく突き立てられた杭が最奥を穿つ度、最早喘ぎとも付かぬ悲鳴を上げる。それは快感から来るものでは無い。確実な生命の危機感からであった。しかし、強く腰を掴まれ、敏感な秘部に腰を打ち付けられていては、到底抵抗も出来ず、唯々背後で快楽の高みへと向かう男の思うまま、身体を差し出すばかり。
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