ある雨の日に

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 僕は先輩の不器用なお願いの仕方に、にやけてしまうのをごまかすよう、わざとらしくため息をつきながら荷物をまとめて席を立つ。 「最初から普通に聞いてお願いしてくれたらいいじゃないですか」 「いいじゃないか。その…なんというかあまり慣れていないんだ。ただの後輩とはいえ異性にこんなことを頼んだりするのは」  先輩はごまかすように笑いながら言い、そのまま顔を隠すように僕の前を歩き先に図書室を出ていくのだった。  その日、僕は少しだけ雨が好きになった。
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