ある雨の日に

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「え?…いえ、ジメジメするし、外に出て濡れるのも好きではないので、あまりそう思ったことはないですけど」  雑談もするようになったとはいえ、先輩から話しかけてくるのも珍しい。そう思いつつ、当たり障りのない答えを返す。 「そう、私は割と好きなの。余計な音を掻き消してくれて普段より静かに感じるとことか…外に出なくていい理由になるのもうれしいよね」  そう言いながらいたずらっぽく笑いこちらを見た先輩になんだか照れてしまい、咄嗟に目をそらしてしまった。  僕は、思わず視線を外してしまったことを取り繕うように言葉を返す。 「雨が好きなんて先輩は変わってますね」 「そうかな?例えば、外での部活が嫌な人が雨で室内や中止になって喜ぶ人がいるでしょ?他にも農作物だって雨が降らなきゃ水不足になったりもするから、案外雨を好きな人だっていっぱいいると思うの」  そう言われると雨も悪い面ばかりではないのだろう。  僕は先輩の話を聞き、少し考えてから改めて最初の質問に答える。 「…それでも僕はやっぱり雨が嫌いですよ。これからこの雨の中、家まで帰らなきゃいけないと思うとどうにも億劫で」  僕の言葉と視線につられ、先輩もまた窓の外へと視線を移す。 「それもそうね。外に出ることを強要される身になると私も雨のことを嫌いになりそうだわ」     
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