ある雨の日に

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ある雨の日に

 怪我で部活に出れなくなってから僕は、なんとなく放課後すぐに帰る気分にも慣れず、図書館で時間をつぶすことが日課となった。  放課後の図書館には僕ともう1人毎日のように通っている先輩がいる。  先輩とは毎日顔を合わせるうちに次第に挨拶を交わすようになり、今では、読書の合間に雑談をする程度には打ち解けていた。  今日は、雨でグラウンドが使用出来ないため、運動部が校舎内でも筋トレに勤しんでいる声が廊下で響き渡っていた。  僕はいつものように図書館を訪れると先輩が本を読んでいた。  窓を叩く雨の音や、廊下から響いている部活の喧噪がある中、この図書館という空間だけはとても静かに感じる。  特に本に集中している先輩の周りはとりわけ音が無いように見え、僕は思わず見とれてしまっていた。  すると、本のくぎりが付いたのか先輩が顔を上げ、入室してきた僕に気付き挨拶を交わす。  あまりじろじろ見ていたのがバレると失礼になるかと思い僕は慌てて挨拶を返し、いつも使っている席へと荷物をおろした。  ふと、もう一度先輩の方へと視線を向けると先輩は雨に打たれる窓を眺めつつ、つぶやくように話かけてきた。 「君は、雨は好き?」     
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