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彼の言葉に頷きながら、数学の教科書とノートを開く。
彼の手の中で回されるシャーペン、細くて長い指、一つ一つの仕草に胸の中がギュッとなる。
「テスト範囲は、ここからここまでだから結構あるんだけどさ…まぁ、公式さえ覚えられれば問題ないとおも……おーい、鳴瀬聞いてるかー!」
突然覗き込まれたて目の前に現れた彼の顔に心臓が跳ね上がった。
「うわぁっ!!!」
「驚き過ぎだし、ちゃんと聞けよ。」
そう言いながら、彼は持っていたシャーペンで私のおでこを小突いた。
「ご、ごめんなさい…。」
見とれてたなんて言えない。
それからは、なんとかときめく気持ちを抑えながら彼の授業に必死についていった。
「よし、今日はここまでかな。」
教室の時計に目をやると下校時刻のギリギリ。
「はーい。」
「じゃあ、また明日の放課後。」
「よろしくお願いします!」
彼は、立ち上がり淡々と帰る準備を始めてた。本当は『一緒に帰ろう』って言いたいのに…。机一個分の距離から離れた瞬間、さっきみたいに喋れなくなる。
「じゃあね。」
「あ、う、うん…またね…。」
引き止められない自分の意気地なし。
教室の扉の開く音に胸が締め付けられる。
「あ、これ、あげるよ。」
入り口から投げられたチョコレートの包みに、顔が真っ赤になった。
「テストうまくいったら、僕にもご褒美ちょうだいね。」
今まで見たことのない子供っぽい彼の表情に心臓が止まりそうになる。
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