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「こんな隅っこの席に通されるなんて、人生最悪の気分だよ」
LA周辺で近頃評判のレストラン、ルージュ・エ・ブルー。
それなりに覚悟をしていたのだが、我々が案内されたのは、絶望感に浸るには充分すぎるほどの末席だった。
その事に対し、ヨハンソンはやり場の無い怒りを持て余している。
では、私はどうなのか。私なら平気だ。
私は何に対しても、決して腹など立てはしない。
「確かにそうだがヨハンソン、こんな事に私は慣れっこだよ。いつもの事さ。例えば行列は常に並ぶために存在するし、行く手に立ち塞がる生意気な赤信号は急いでるような時のために存在する。そんなふうに怖い顔をするな。たかがランチの席だ。こんな出来事なんて店を出て2分もしたら綺麗に忘れてるさ。それよりも、例のモノは持ってきてくれたんだろうな」
ほんの挨拶程度に口をつけてからすぐにナイフとフォークを投げ出していた私は、言いながら店内の過剰気味なヨーロピアン風の装飾を無邪気に楽しむ振りを装いつつ、我々にとって障壁となりそうな不審者や尾行者の存在の有無をチェックしていた。
店内は満席に近い状態ではあったが、我々のテーブルが隅であった事が思いがけず幸いしてほぼ全席を大きく振り返る事無しに一望する事が出来た。まるで問題は無かった。
私は更に促した。
「例のモノだよ、ヨハンソン」
「ここにある。だが、もうこれで最後だ。ヤバイんだ」
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