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市庁舎の前に出現するメリーゴーランド。
その名で呼ぶよりも「回転木馬」で呼んだ方が似合うノスタルジア。
上下に揺れながらはしゃぐこどもたちはみんな、あたたかい毛糸のマフラーと帽子を身につけ、迫り来る冬にすら、しあわせ色に染まる。
尖がり帽子のような天辺。色とりどりの白馬たち。
丸い灯りがぽんぽん散りばめられてぐるぐる回る。
私はここに立つといつまでも帰りたがらずに、あなたを困らせたね。
彼が包みを開けて魔法のように取り出したもの。
目の前の本物もびっくりするくらい細かい細工。手のひらにずっしりと感じるアンティークの回転木馬の置物。
「気に入った? 君が来るって知ってからパリ中を探し回ったんだよ」
そこには、ほめてほめて、とウィンクするあなたがいる。
彼がそっと横についている手巻きねじを回す。ギュ、ギュ、ギュ。
あ、置物じゃなくて、オルゴール?
アイシングをかけたクッキー生地のように、クリーム色とビスケット色の木馬が交互に音楽に合わせて踊る。小さな世界が跳ねて、手を繋いだこどもみたいにはしゃぎ回る。
耳に当てて、その曲名を知る。
「Someday my prince will come」邦題「いつか王子様が」
「僕を選んでもらえますか?」
答えの代わりに、両手がふさがった私は背伸びをしてキスをねだる。
名残惜しい音に導かれたまま家路について、あたたかい毛布のあるあなたのところに。
ここが私が流れ着く終着駅だと信じて、包み込まれる。
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