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いつも俺の真似だと言ったけど。確かに同じ技だけど。タイチのメソッドはやっぱりカッコいい。
185センチの長身を弓のようにしならせ、宙を切り取るように浮かぶその姿を目に焼き付ける。
スピンはやっぱりヒヤヒヤするけど、お手本のようなリップtoリップは健在だ。50日余りのブランクが本当にあったのかと疑いたくなるほど鋭く正確で、そっちの方がむしろ怖い。
「太一……ちゃんとハーフパイプに戻ってきたっちゃ……」
雄大はスロープスタイルへの転向を決め、ビッグエアーとの二種目エントリーを目指す。ハーフパイプも代表入りを狙えない実力では決してないんだけど、やはり自分にはさほど向いていないと痛感したらしい。
「碓氷村の碓氷さん達で三種目制覇しようぜー」
「うん。そうなれるように頑張る」
笑顔で戻ってきたタイチは真っ直ぐ俺に向かって飛び込んでくる。前のめりに受け止めて、ぎゅううっと抱き合った。雄大やスタッフみんなとも抱き合った。ヒロさんも珍しく息子をハグし、背中をポンポンと撫でた。さつきさんだけは仏頂面だったけど、その腕の中からタイチに向かって手を伸ばしたゆきは、キャッキャと笑って天使のようだった。
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