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碓氷村の工房責任者、小椋さんが端材を使って遊びで作ったところ評判になり、あっという間に生産ラインに乗ったらしい。売店の人気商品だとか。
「可愛すぎるぅぅ……!」
「なー☆柊にーちゃんのも可愛いぞ」
「ラピスもあるのっ……!」
「あとで渡すから見せてもらえ」
「両方くれ」
「柊にーちゃんに交渉しろ」
それにしても雄大がかなり仕上げて来た。村で久し振りに、親父がつきっきりでコーチした事が窺える。昔から俺と雄大は親父のコーチの下で飛んで来た。俺にくっついてまわる雄大は弟のようであり、一番身近なライバルだった。
『俺が追いかけてたのは柊にーちゃんじゃないよ。太一だ』
そりゃまぁそーゆー事もあるか。幼少中高ずーっと一緒で、時間だけで言えば柊より遥かに長く濃く、雄大と過ごして来た。それだけに居なくなった時は心にぽっかり穴が空いた。でも今こうして同じ舞台で再び競える事が嬉しくて楽しい。それに……今日の雄大は予選までと違う。
「練習、一本だけ?」
「うん。今更焦ってもしょーがない」
「12位以内。一緒に行こうな」
「充電」
雄大はデッカい体で俺にハグしてきて、それから真新しいお守りを嬉しそうに胸ポケットから覗かせた。そして温くて大きな手で俺の右手を取って胸に押し当て、念を送れと言った。俺と柊を覗き見でもしてんのかと思ったけど、まぁよくある験担ぎだ。一緒に明日の決勝に進めるように、あと、怪我が無いように祈った。
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