氷の壁

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  「ハーフパイプが五輪で採用された長野……あれ、兄貴と会場で生で見てました。小学生でした」 「へえ!」 「今とは全然違いますよね。(トリック)もハーフパイプそのものも」 「ホントに」 同い年でその辺がわかり合えるってちょっと嬉しい。タイチもカズさんと仲良くなってくれるといいな。 カズさんの担当はジムワークとドーピング対策。これまで安藤さんに頼りきりだった分野が補強される事になる。俺一人でも大変だっただろうに、先シーズンはタイチと二人分。よくぞこなして下さった。 「チーフトレーナーの安藤さん、凄く怖いって聞いたんですけど……」 「そんな事ないよ。裏表が無くてわかり易い人だよ?」 腹は無いけれど、思った事をすぐ口にするタイプで誤解され易くはある。タイチも最初は苦手そうだった。俺にしてみれば、腹に溜め込んで何を考えてるのか解らないタイプよりよっぽど信頼出来ると思うんだけど。 「あっっ……ロジャーさんがこっちに来られますっっ……!」 引退してもロジャーのカリスマ性は圧倒的。ましてスノボに関わった事があれば尚更だ。でも、引退から半年で若干腹が出た気がする。美しいメソッドの為にちょっと絞って貰わないと。
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