氷の壁

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  ロジャーは五輪スノーボード競技のアドバイザーとして招聘されている。IOCも一目置く、それがカリスマなのである。そしてカリスマゆえ目立つ。 日本選手団の到着をホテルのロビーで今か今かと待っていると、各国の色んな肩書きの人達が声を掛けてくる。ついでに俺にも声を掛けるので落ち着かない。作り笑いのし過ぎで表情筋が固まってしまった。 「あ!シュウ、来た来た!」 比較的小柄なハーフパイプの日本人選手達の中で一際大きな男が二人。一人はタイチ。俺のタイチ。10日振りのタイチ。 全日本の白ジャージ……… 似 合 う ………! 「柊にーちゃん!ロジャー!」 雄大が大声を出した途端、みんな振り返った。選手達を率いる連盟のおっちゃん達まで振り返った。雄大のバカバカ。選手達は(カード)を受け取って部屋に上がるよう促され、偉いさん達は俺とロジャーをホテルのラウンジに連行した。エスカレーターに乗りながらタイチはこちらに視線を移し、じーっと見つめている。俺もじーっと見つめ返す。ああタイチ……髪が短くなってるぅぅ。 「柊さん!お疲れ様です!」 「森くん!なんか久しぶり~~」 でも俺が求めているのはタイチである。
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