氷の壁

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  森くんからは、控えめにではあるけど、今回は公費で参加する大会だから自重するように釘を刺された。ちゃんとわかってるもん。ヨーコさんからも耳にタコが出来るほど言われたもん。でもタイチはうちの所属なのに知らん顔なんて不自然だ。 「知らん顔はしなくていいですが、大人の対応をお願いします。ミーティングのあと時間が取られますから部屋番号を」 「タイチの部屋は?」 「雄大くんと曽我くんの三人部屋です」 「……………」 「訪問はダメですよ。柊さんの部屋にお泊まりも」 「……………」 わかってる。日の丸を背負って送り出して貰った以上、お行儀よく規律正しく。俺だってそうした。何も意識せずそうして来た。ちゃんとわかってる。 「あ、強化部長がお呼びですね。平昌は有力選手は前倒しで内定が出るそうです。ボスお得意の外交、宜しくお願いしますね」 「はぁ~~い。あ、カズさんの事お願い。固まってるから」 「了解しました!」 うん。ちゃんとわかってる。俺はFlyHighの顔で日本の顔にもなり得る男。五輪5大会連続出場とメダルの期待を背負った男。所属ライダーであるタイチの今後の為にも、礼儀正しくニッコリ微笑んで見せますよ。
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