氷の壁

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  「なに抵抗してんだっ!」 「だって……!森さんが、今回はみんなのお金で派遣して貰ってる大会だから自制しろって……!」 「自分で押し倒しといて何言ってんだ貴様っ」 「ごめんなさい……でも……でも……」 「…………」 「…………」 「…………」 ため息ついでに萎えた。冷静になった。 確かにそれはそうなのである。連盟からの派遣は助成金や各地のスキー連盟から集まって来た諸費用から賄われる。のんびり旅行に来た訳でもない。あ~~~正論。正論ですわ。そしてその正論を真っ正面から受け止めるタイチが可愛いし好きだ。 「わかった。じゃあキスだけ」 「ホントはそれもダメっちゃ……」 「うちも負担金はちゃんと払ってんの。だからキスまでは許される」 「ホントに……?」 「後で森くんに帳簿見せてもらえ」 「柊が言うなら信じる……」 ちゅっと触れるだけのキスをして。ベッドで膝枕しながら髪を撫でる。散髪したてだな。触り心地が新鮮。ヨーシヨシヨシ。 「自制し過ぎで体調おかしくなって飛べなくなりそう……」 「表彰台乗ったら縛っていいぞ」 「…………」 「まぁストイックに頑ば」 タイチはばっと起き上がると、額にちゅっとキスしてさっさと部屋を出て行った。 おい……おいおいおい…… あのど変態めが。
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