氷の壁

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  何はともあれW杯ハーフパイプ第1戦。気合い入れろよ日本勢。五輪の出場枠、キッチリもぎ取ってくれ。 3月のシェラネバダで高ポイントを稼いだ俺、クロード。枠は最大四つ。これを確保する為にはまだまだ安心できない。タイチ、雄大、あの二人以上に飛べるライダーが今の全日本にいるのかはわからない。その辺り、楽しみではあるが気が抜けない。休まらない。早くロジャーみたいに水戸黄門の気分になりたい。 「日本勢、ハーフパイプの選手層の厚さは世界トップクラスだね。やっぱり君の言うように日本人向きなのかも知れない」 それを言ったのはタイチだ。日本人は小柄でも機敏に綺麗に回る選手が多いから。雄大みたいに欧米人並みに大柄で重いと、スピードには乗れるけど滞空時間で差が生まれる。そこはタイチもそうだけど、あいつの場合はな……ヒロさんが心配していた野生の勘を軸に、穴が開くほど研究しまくった俺をトレースする。 ダイナミックで繊細……そんな(トリック)を決められるのはタイチだけだ。 今日もあいつは俺の背後を狙って飛ぶ。 たとえそこに俺が居なくても、俺を越えて行く事だけをイメージして飛ぶ。 それがあいつの強さだ。
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