氷の壁

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  いつも5本でいっぱいいっぱいだと言ってたのに。やはり明日の最終滑走を意識してるのか。1260からのスピードはまだ生きてる。 でも、あれ ───── あの軌道 「1080……いや、もう半……あ!あ ─────!」 ロジャーの叫びが掻き消されるように会場からも悲鳴が上がった。 一瞬。 ほんの一瞬だった。 最後の6本目の着地でタイチのアジュールがリップ、角に当たった。 音が。 激突した音がここまで聞こえた。 その瞬間物凄い勢いでタイチの大きな体が跳ね、ゴーグルが飛んだ。アジュールの欠片も飛び散った。 ─────── 滑落。 広がるざわめき。 それも消え。 頭の中に耳鳴りだけが渦巻く。
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