氷の壁

25/34
前へ
/350ページ
次へ
  動かない…… タイチが動かない…… 動かない……! 「あかん、意識がなさそうや。救護班」 「ケン、待って。担架が降りて来た……急いで……!」 全身がガクガク震える。でも、体が、腕が、前のめるようにガードに、ボトムに向かう。 「たい……タイチ……!」 「駄目だシュウ!コースにはコーチだって入れない!」 ロジャーに制されても体が前に進もうとする。ガードを押しのけ、腕を振り払おうとする。 「離してロジャー……タイチがっ……」 「大丈夫、落ち着いてシュウ……落ち着いて……!」 抱きすくめられた腕の隙間からハーフパイプを凝視する。 血が………… 氷のボトム…… 真っ白な氷の壁の底にタイチの血が染み込んでいる。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!

301人が本棚に入れています
本棚に追加